MISFIT LIFE

INTERVIEW

「かもめブックス」陽気なオーナー柳下恭平さんに聞く、
校閲のおもしろさと人生を変える3つの方法

柳下恭平さんを知っていますか? 神楽坂にある小さな本屋さん、「かもめブックス」オーナーで、文章の校正・校閲を専門に行う鴎来堂(おうらいどう)代表です。 柳下さんは、本をこよなく愛する校閲者として、革新的な仕事を次々に生み出しています。一方、周囲の誰もが認める、圧倒的に陽気な人! 初対面でも旧知の仲でも、柳下さんと一緒に過ごせば、いつもハッピー。

毎日を陽気に生きたい!そう願っている人は決して少なくないはず。だけど、それは、シンプルなようで、なかなか難しいことでもあります。そこで今回は、柳下さんのお仕事ぶりや人生について伺いながら、毎日を陽気に楽しく過ごす術や、人生を変える方法を教えてもらうことに。聞き手は、やはりMISFITな人生を送るエッセイストの紫原明子さんです。

話は、予想外というか、予想通りというか、どんどん思わぬ方向に......!?

PROFILE 柳下恭平(やなした きょうへい)

1976年生まれ。さまざまな職種を経験、世界中を放浪したのちに、帰国後に出版社で働くことに。編集者から校閲者に転身する。28歳の時に校正・校閲を専門とする会社、株式会社鴎来堂(おうらいどう)を立ち上げる。2014年末には、神楽坂に書店「かもめブックス」を開店。町の憩いの場として、多くの人に愛されている。

生演奏の「蛍の光」が流れる本屋さん?

紫原こんにちは。今日はよろしくお願いします。

柳下よろしくお願いします。

紫原突然ですが、葉加瀬太郎さんに似てるって言われませんか......?

柳下言われます!

紫原そうですよね!

柳下あんまり似てるからって先日、友人がバイオリンをくれたんです。そこで、せっかくなのでバイオリン教室に通い始めました。

紫原練習されてるんですか。

柳下はい。今の目標はバイオリンで「蛍の光」を弾けるようになることなんです。かもめブックスの閉店は夜10時なんですが、ただ店仕舞いするんじゃなく、生演奏で「蛍の光」が流れたら洒落がきいてると思って。

紫原おぉ、それは素敵ですね!

柳下ありがとうございます。

紫原......さて、さっそく本題に入りたいと思います。今日、柳下さんにお話を伺うことになったのは、とても陽気な、この取材にぴったりの人がいるよ、という共通の知人からの紹介がきっかけでした。......ただ、実はここに来るまでは、失礼ながらちょっと疑問を持っていたんです。

柳下疑問というと?

紫原柳下さんは校正・校閲のプロの方だと伺っていました。私も仕事柄、自分の原稿に赤字をいれてもらって、誤字脱字を指摘されたり、編集者さんに事実が正しいどうかを調べてもらうことがあります。

柳下いわゆる赤字、赤入れというものですね。

紫原ええ。プロによる赤入れというのは、本当に細かい作業ですよね。誤字脱字が「ある」という前提、事実関係が「間違っている」という前提で読まなれば見落としてしまう、ある意味、性悪説で原稿を見ることが必要となるのではないでしょうか?

柳下うーん、校閲を性悪説、性善説で考えたことはなかったけれど、確かにそうとも言えますね。少なくとも、普段の読書とはまた違った読み方を必要とします。

紫原一つのミスも許されない、とても神経を使うお仕事だと思います。だからこそ、お仕事を通してストレスを感じたり、生活の中でも厳しい見方を引きずってしまうようなことってないんでしょうか?

柳下なるほど。そうですね。......では、まずは校正と校閲の仕事について、詳しくお話ししていきましょう。

校正は答えの"ある"仕事、校閲は答えの"ない"仕事

柳下まず「校正」とは、たとえば、1度目のチェックで指摘された赤字が2度目の原稿に全て反映されているか、一つ残らず間違いが直っているかをチェックする仕事や、指示通りに直す仕事です。これには答えがあります。一方で、「校閲」は文章の事実関係などの誤りを見つけることですが、実はこれには答えがないんです。

紫原答えがあるから正誤が判断できるのではないんでしょうか?

柳下それが、そう簡単な話ではないんですね。川端康成さん代表作といえば?

紫原『伊豆の踊子』とか?

柳下もうひと声! 長編!

紫原『雪国』? 

柳下それです!「国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。夜の底が白くなった」という書き出しは有名ですね。 では、この文章が『子どもが読む日本の名作』に収録されているとしましょう。

紫原ふむふむ?

柳下まず行うのは、表記が一言一句きちんと引用されているかを底本と確認します。底本で漢字だったところが、文字入力でひらがなになっていたり、誤変換されていたりするのは引用と言えないですからね。底本に誤字があっても、その誤字まで含めてきちんと引用するんですよ。もちろん、誤字には注釈をいれてあげますけれども。

紫原へえー。

柳下ここまでが、「校正」なんですね。100パーセント底本とそろっているのが正解というわけです。校正には100点があります。

紫原なるほど。

柳下でも、学年別配当とか、子どもが習ってない漢字にはルビ(ふりがな)を振ってあげたいわけです。習っていない漢字は読めないわけですから、日本語としては正しくても読者にとっては広い意味で間違いなんですね。 こういう、読者を想定しながら間違いのレベルを設定するところも含めて考えて読むのが「校閲」です。

紫原だから、答えが"ない"んですね!

柳下しかも、冒頭の文言「国境」ですが、これは「こつきよう」とも「くにざかい」ともルビが打てるわけです。作家先生が漢字で原稿を書いていれば、正解の読み方はわからないわけです。そういうときに、どちらかを決めずに、「どの読み方にしますか?」とあらゆるパターンを編集さんに提示するのも僕らの仕事なんです。

紫原確かに、漢字には読み方がたくさんありますよね。

柳下そう、それだけでなく、日本語の場合は「ルビを振らない」というのも含めて文学表現ですから、やはり正解というものはないんです。

紫原なるほど、奥深い!客観的な事実と、作家の意図の両方を考慮する必要があるんですね。

柳下はい。それに加えて、読者の目線で見ることも必要です。どんなに作家の意図があっても、読者が誰一人読めない漢字だったり、理解できない話であれば意味がない。調べた事実と、作家の意図と、読者目線をあわせて考えて、どうしても指摘したほうがいい場合には、"こういう事実もありますよ"と新しい可能性を、作家や編集者に見せてあげる、これが校閲の仕事です。

紫原奥深い。人間力の必要な仕事ですね。

人生を変える3つの方法

柳下僕はもともと本がとても好きで、日本語も好きなので、この仕事は決してストレスフルではないんです。やればやるほど奥深い面白さを見つけることができますよ。

紫原そうなんですね。やはり意欲を持って打ち込める仕事をするというのは、陽気に生きるためには必要なことでしょうか?

柳下そうですね。僕には持論があって、人生を変えるためには、仕事を変えるか、パートナーを変えるか、住むところを変える、この3つしかないと思ってるんです。もし何かうまくいかない、現状に問題があるという場合には、身を置く環境を変えるしか方法はないと思うんですね。

紫原なるほど、おっしゃる通りですね。......ところで、ここまで伺ってちょっと気になったんですが、柳下さんはそもそもどうしてこのお仕事を始められたんですか?

柳下えーと、それはですね。どこから話そうかな。......僕、昔歌舞伎町でホストをやってたんですね。

紫原えっ?

柳下あ、ええと、より詳細に話すと、その前にしばらくの間、ホームレスだったんです。

紫原えええっ!?

次回、柳下さんはなぜホームレスだったのか!?ホームレス→ホストクラブ勤務を経た柳下さんがどのように校閲の仕事に就いたのか!? 柳下さんのドラマチックな人生に迫ります。

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「かもめブックス」陽気なオーナー柳下恭平さんに聞く、校閲のおもしろさと人生を変える3つの方法

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PHOTOGRAPHS by 谷口大輔

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